1.序章
2.ボー君が我が家にやってきた
3.いったいボー君はどんな生活をしてたんだろう?
4.突発性激怒症?!!
5.ダンボールサークルでの生活
6.ダンボールサークルでの生活2
7.流血の惨劇が起こってしまった!
8.生涯忘れられない夕景!ついにボー君が!
9.2003年・夏・・・
10.2007年5月・・・

序章

やっと笑ってお話できるようになりました。今、我家には4頭のコーギーがいます。1頭は子犬の頃から我家で育った7歳の女の子。
それに、最近家族に加わった女の子が2頭。
そして、お話の主役となる、2002年の1月に捨てられて、縁あって我が家に来た6歳の男の子です。

彼の名前はボー。でも、我が家に来るまではきっと別の名前で呼ばれていたのです。
今、その名前を調べることも知ることも、私達には出来ません。
ですが、 今では彼は「ボー君」と呼ばれることに慣れてくれています。
「ボー君」と私達が呼ぶと、彼はすぐに寄ってきて私達の顔や手をペロペロ舐めてくれたりもします。

実は、我家にやってきたボー君と私は、この数年間、泣き笑いしながら暮らしてきました。
文字通り傷だらけになりながらの生活でした。
「捨て犬を助け出したのね」「偉いわねェ」。そんな言葉を何度も言われました。
でも、そんなことじゃないのです。
それは確かに、彼を助け出したのは事実です。
でも、本当の「大変さ」はそれから後始まったのです。
彼をセンターから引き取った時、
私はまさかその後数年間も彼と泣き笑いするとは予想もしていませんでした。
慣れない?人見知り? それとも違うのです。

ボー君は保護された時に推定1歳。
生まれてからのわずか1年間に、ボー君になにが起きたのか。
今、私は彼が生まれてから私と出会うまでの1年間を、なんとなく想像できるようになりました。
その1年間のボー君を思うとき、私は涙がとまらなくなります。
そして、ボー君を追い込んでいった飼い主の方に怒りを覚えもします。
ただ、最近、悪いのは飼い主さんではないとも思うようになりました。
きっとその飼い主さんも悩んだと思います。
でも、解答が得られなかったんですね、きっと。

どうしたらボー君と信頼関係を築けるのか。
それだけを模索し続けた数年間でした。

毎日が戦いでした。何度も私は泣きました。きっとボー君も泣いたのだと思います。
何度も何度も噛まれました。時には怒り、時には泣き、時にはなだめ。。。
吠えかかり、歯を剥く彼に何度も何度も涙しました。
先住犬の娘はストレスを起こして体調を壊しました。

ボー君は、完全な人間不信だったのです。
もちろん権勢症候群の兆候もありました。
でも、一番の問題点は、突発的に引き起こされる攻撃性だったのです。
その瞬間、彼は何もかもわからなくなってしまいます。
とんでもないパニックを起こすのです。
そして、猛烈な勢いで攻撃を仕掛けようとします。
ある本によれば、
「かつて経験したトラウマなどが原因。治すのは難しい。 」と書いてありました。
絶望的な内容です。
以前飼育されていた環境や状況の中で、彼の身に何かが起きたのです。
そして、彼は彼自身の身を守るために、攻撃をするようになったのです。
それは深いトラウマとなって彼の中に植え付けられ、
それが故に、彼は捨てられてしまった。。。

実は、ボー君はそんな問題点を抱えていました。

彼と出会って、彼と暮らし始めて、数年たちました。
今、その間にあった全ての出来事を笑い話にできるなと、私はそんな予感を持っています。

年間20万頭以上のワンちゃんが保健所などに収容され、飼い主さんが見つからないまま殺処分されています。
その大半は、人間に飼われていた飼い犬です。そう、ほとんどの子達が捨てられたのです。
どんな事情があるにせよ、捨てることはイコール殺すことを意味しています。
なんで家族が死ぬようなことを、殺されてしまうことをしてしまうのでしょう?

でも、捨てるという行為自体はちょっと置いて、何故捨てるのか考えてみたのです。
「安易な気持ちで飼いすぎる。」
これしかないような気がしてなりません。たぶん、これが最大の原因なのでしょう。
実は、ボー君のお話をしようと考えたのは、これが理由でした。
安易に飼う。衝動的にショップで買う。。。。。

もし、これからワンちゃんと生活したいと思っている方がいたら、
ぜひ、ボー君との話を知ってください。
ボー君がやってきた時、私は絶望感に包まれました。
それくらい問題の多い子でした。
でも、それは100%以前飼っていた方の責任なのです。
ボー君自身には何一つ悪いところも責任もありません。
そう、飼いかた、暮らし方の問題なのです。

ボー君との泣き笑いの話しが、多少なりとも皆様のお役に立てて、
ボー君のような不幸な子を減らすことができたら、
それは私にとって、 一番の幸せです。


ボー君との出会い
  2002年1月中旬、一通のメールが私達の元に届きました。
東京動物相談保護センターのホームページに、保護犬が載っている。
何とか救出できないだろうか?という内容でした。
すぐに、そのホームページを見てみると、
一頭のコーギーが保護されています。
1月24日まで収容するという内容で、見た目とても良い子に見えました。
トライのコーギーで大きさは中ぐらい、
都内足立区の綾瀬付近の電柱に
リードでつないだまま放置されていたのを保護したとのことでした。
青い首輪をしていること以外、
この子を証明するものは何一つ無かったようです。
 


これが、当時ホームページに載せられていた写真です。
とても大人しそうな、可愛い、しかもまだ成犬になっていない。。。
そんな感じに見えました。


早速、収容先のセンターに電話を入れてみました。
引き取り手は決まっていないとの事、
皆さんに呼びかけたところ、里親さんになっても良いと言う方も決まりました。
良かった〜、とその時は思っていたのです。

この子を引き取ることが決まり、
その際に数名の仲間が実際にこの子と対面しました。
第1印象はまずまず。
環境が激変したせいか、下痢はしていたものの、外傷も無く。
と、そこまでは良かったのですが、
一人が体に触った途端、突然その方に噛みついたのです。
あっという間の出来事でした。
かなり歯が深く入ってしまったようで、出血を見ました。
今から思えば、この時点でボー君が抱えていた問題点に気が付けば良かったのです。
ですが、当時としては、収容されて環境が変わったせいで興奮ししたのだと
解釈していたのです。


 

1月26日。遂に彼を引き取る日になりました。
里親さんご夫婦と私とは、現地で合流する約束をして、
私は彼を運ぶシャトルケージを持参しました。
ちょっと冷える朝でした。

実は、私はかなりワクワクしていました。
保護されたワンちゃんを救出できたこと。
それとこのワンちゃんと対面できること。
前の晩からかなり興奮していたのです。
出来れば一緒に暮らせたらいいなぁと、無責任なことも考えていました。

センターは世田谷区にありました。
京王線八幡山駅から1Kくらいの場所です。
里親さんご夫婦は既に到着していて、挨拶もそこそこに事務所へ。
センター所属の獣医さんの説明や、注意事項を聞き、書類に署名したりして、
約1時間後に引き取りとなりました。
シャトルケージを用意したところに、所員の方数名に引かれて彼がやってきました。
写真で見るよりは少々大きめ。でも成犬まで達していない様子です。

シャトルに入れようと、私が扉を開き、
所員の方がそこに彼を入れようとした時でした。
それまで何でもなかった彼の表情が一変し、
突然扉を押さえていた私の右手に噛みついたのです。
あっ!やられた!と一旦振りほどいたものの、再度ガブリ!
最初は歯がかすった程度だったのですが、
今度は右手の親指の爪の付け根あたりに歯がまともに食い込みました。
所員の方が慌てて彼を引き離してくれたのですが、右手からはみごとに出血。
「大丈夫ですか?」との問いに、
咄嗟に(ここで問題大きくしたらこのワンちゃんは人間に危害を与えると判断されて、引き取れなくなる)と思い。
「あ、たいしたことないですよ。驚いちゃったんですねぇ」と笑顔で答えました。
どうも、立ち会っていた獣医さんも同じように思ったらしく、
「いいんだもう引渡すことが決まってるんだから、引渡しなさい!」
私は、獣医さんから手当てしておきましょうと言われて、治療室へ。
その短い間に獣医さんと会話しました。
「こういうことやってると、噛み傷って勲章みたいなものですね」、
獣医さんの腕にも噛み傷の跡が・・・。ハスキーだそうです。

治療から戻ると、シャトルは既に車の中。
里親さんご夫婦とともに、知り合いの獣医さんのところまで
健康診断と予防接種を受けに向いました。

お昼過ぎに到着。
前もってお願いしてあったので、
お昼休みに開けてくれて診察してもらったのです。
と、ところが。。。ここでも彼は爆発。
それまで何でもなく診察や予防接種を受けていたのに、
看護婦さんが何気なく寄った途端、えらい勢いで噛みつこうとしたのです。
幸い、袖口をかすっただけでしたが、
さすがに、これは問題ありだゾと私は思い始めたのです。

そこで、獣医の先生と相談。
里親さんは確かに既にコーギーを飼われているものの、
こうした人間を威嚇したり攻撃したりする子には慣れていないはず。
ましてや、捨てられるまでの飼育方法や接し方など何一つわかっていない状態では、
不測の事態が起こらないとも限らない。という意見で一致し、
里親希望のご夫婦には、
「この子はどうも普通の状態じゃないようなので、
ある程度リハビリが必要だと思います。
せっかく里親さんを希望してくださったのですが、
ひとまず、私がこの子を引き取り、トラウマや権勢など対処してみます。」
とお話をしました。
ご夫婦ともに残念そうだったのですが、
状況は目の前で見たので納得していただいて、
診療完了後に、私がこの子を我家に連れ帰ることしました。

でも、この時私は
1〜2週間で普通の生活に慣れるだろうと、甘く考えていたのです。
この日、ボー君は我家にやってきました。


続きです